Q1 司法面接ってなんですか?
A: 司法面接は性虐待や、身体的虐待、ネグレクト、DVや犯罪の目撃といった、子どもたちが経験した事実を聴き取る面接手法です。
性虐待などの虐待を受けた子どもは、児童福祉司等児童相談所職員、警察官、検察官、裁判官などの多くの職種に対し、何度もつらい体験を話さなければならず、そのたびにトラウマを再体験させられ、深刻なダメージを受けます。司法面接を、児童相談所・警察・検察で構成される多機関連携チーム(MDT)の枠組みで実施することによって、調査面接や事情聴取の回数を減らし、「二次被害」を防ぐことができます。
Q2 子どもたちは、司法面接を1回受ければ、もう誰にも被害について話さなくても良いのですか?
A: 子どもから被害について聴き取るには、次の三つの段階(場面)があります。
① 第一段階:子どもに、性虐待など虐待が疑われる兆候を見つけたとき。
児童相談所や警察に通告・通報するために必要な最小限の情報を得るために、子ども本人から話を聴きます。このとき、子どもの負担を最小限にすることと、次の調査・捜査に支障を来すことを避けることの両方を満たすため、「誰が何をしたのか」だけを質問し、それ以外の質問をしないことが大切です。この聴き取りには、RIFCRという手法などがあります。RIFCRは、通告義務者向けに開発されたもので、子どもと接する機会のあるかたで、「RIFCR研修」を受講されたかたならどなたでも使っていただけます。詳しくは、ホームページの「RIFCR」および「RIFCR研修のご案内」の部分をご参照ください。
② 第二段階:通告された子どもは、司法面接を受けます。
司法面接は、性虐待などの被害を受けた子どもから、情報を包括的かつ詳細に収集する過程です。つまり、児童相談所の調査や警察の捜査、検察の取り調べとして行われ、この3つの目的を1回の司法面接で達成するものです。司法面接は、面接の様子を録画してビデオに残すところに大きな特徴があり、他の先進諸国では裁判の証拠等として刑事訴訟で活用されています。
③ 第三段階:法廷での証言
司法面接の録画ビデオが裁判の証拠として提出されることで、子どもが刑事裁判に出廷しなくて済む場合もありますが、被告人の反対尋問権は保障されなければならないため、子どもが刑事裁判に出廷する場合もあります。そのようなときには、子どもにアドボケイトがついて支援をする体制が他の先進諸国では整えられています。
Q3 司法面接研修を受講したら、誰でも面接者になれるのですか?自分の職場でやりたいのですが。
A: 面接担当者は、正式に研修を受けた人でなければなりませんが、正式に研修を受けたからといって、個人で実施できるものではありません。児童相談所の調査面接や警察や検察の取り調べとして実施される面接で、その枠組みの中に司法面接者として参画できる人だけが司法面接を託されます。司法面接は心理療法の技法ではありませんので、治療目的で使うものでもありません。
Q4 どういう人が司法面接の多機関連携チームに参画できるのですか?
A: 司法面接は、多機関連携チーム(MDT)で実施します。これには、コアMDTメンバーと、拡大MDTメンバー、さらに、補足的MDTメンバーがあります。
① 性虐待の場合、コアMDTメンバーは、児相相談所、警察、検察、司法面接担当者です。 実際に子どもと面接をするのは、面接担当者ひとりで、他の人たちはモニタールームで面接の様子を見守り、必要に応じて、各々の職種で必要となる質問を面接者に伝えて、追加の質問をしてもらうことができます。これにより、これまで個々の職種がバラバラに行ってきた調査・捜査のための面接を1回で済ませることができるのです。
② 拡大MDTのメンバーとは、子どもの福祉を担う弁護士、医療関係者、精神保健を担う者、被害者支援サービス関係者(アドボケイト)などです。この人たちは、モニタールームに入るわけではありません。しかし、司法面接の後、子どもに直接関わることになる職種ですので、司法面接を直接モニターしないとしても、司法面接について熟知しておく必要のある人たちです。
③ 補足的MDTメンバーとは、市区町村の児童福祉担当者や学校関係者、幼稚園や保育所などの機関の方たちです。この方たちは、司法面接に直接的に関わることはありません。むしろ、虐待を受けた子どもを発見したり、子どもから相談を受けたりする人たちなので、RIFCR研修などを受講して、通告義務者としてどのように子どもから話を聴くべきかを熟知しておくべきです。
Q5 ChildFirst®司法面接の出前型研修とセンター型研修の違いは?
A: 出前型研修は、地方自治体やその他各団体からのお申し込みに対し、トレーナー・チーム(ChildFirst Japanファカルティー)が現地に赴き、研修を実施するものです。MDTで受講されることが条件となります。
センター型研修は、「子どもの権利擁護センターかながわ」で開催するChildFirst®司法面接研修に受講者にご参加いただくものです。児童福祉司・児童心理司等児童相談所職員、警察官、検察官、家庭裁判所調査官、子どもの弁護士、医療者、子どもの権利擁護センター(Children’s Advocacy Center)としての機能を担いうる機関(大学、医療機関、子ども虐待防止NPOなど)の職員など、MDTのコア・メンバーもしくは拡大メンバーとして活動できる方が対象となります。
Q6 センター型研修は、いろいろな地域に住んでいる人がバラバラで受講するから、個人で使えないなら受けても意味がないのでは?
A: 日本では、まだ司法面接そのものが根付いておらず、スタートの段階にあると言えます。各地の児童相談所では、「被害確認面接」として児童相談所職員のみで実施され、本来の多機関連携チーム(MDT)で実施しているところはまだ少ないのが現状です。だからこそ、児童相談所の職員だけでなく、警察官や検察官、家庭裁判所調査官、医療者など、MDTの構成メンバーとなる職種に従事する多くの専門家に受講していただき、MDTの枠組みで司法面接を実施することの大切さをご理解いただくことが、日本に司法面接を広め、根付かせていくことにつながります。みなさんが地域に種を蒔いてくださることを願っています。